ボルタンスキー作品
さて、やはり最後はこの作家さんの紹介です。
クリスチャン・ボルタンスキー(フランス)も過去3回とも参加している作家さんです。すべての作品に共通しているのは、過疎化がすすむこの地において人間の「不在」をテーマに作品をつくってきました。
たくさんの衣服を吊るしたり、廃校となった学校を舞台に作品を展開しているのはその象徴です。
場所:旧中里村
アートトリエンナーレ2000年度作品
0.5haの畑に無数の白い衣服を吊るした作品です。それはかつてそこに人が存在していた、しかしもういないという人の気配や喪失感をあらわしています。
たくさんの白い衣服が夏の風に舞い、光を受けていました。その光景はこの地に生きた、今は去った人々の魂の揺らぎのようです。
場所:旧松之山町
アートトリエンナーレ2003年度作品
正直、2003年当時、ボルタンスキーという名前は記憶のどこかにしまわれていましたがあまり印象に残っていませんでした。
しかしこの作品に出会い一生忘れられない名前になりました。
教室に吊るされた無数の衣服を見て、ああこの作家さんなのかと前回の作品を思い出し、感動しました。
この作品については語りたいことが山ほどあるので、どこから手をつけてよいのやら…どんな作品かというと、廃校になった旧東川小学校の静けさの中にかつての子供たちの歓声と気配、影をよみがえらせます。
静かな廊下の奥から聞こえてくるピアノの演奏。衣服がたくさん吊るされた教室。カーテンのむこうから聞こえてくる話し声。白い布に覆われた無数の本が並ぶ図書室。夏の草花で覆い尽くされた理科室。
私は学校が嫌いな子供でしたが、この廃校に立ったときとても懐かしく幸福な気持ちになりました。その静寂の中にある気配につつまれてしまいました。素晴らしいの一言に尽きます。
わたくし何度も足を運びました。なおこの作品は照明作家のジャン・カルマンとの共同制作です。とくに夕暮れどきは電球の灯りが校舎に灯り、印象的でした。
場所:旧松之山町
アートトリエンナーレ2006年度作品
とうとう最後の作品の紹介になってしまった…。
もちろん最後はこの作品です。2003年と同じ旧東川小学校の廃校。しかし作家が訪れたのは2006年の記録的な大雪の冬でした。雪に閉ざされてしまった夏とは全くちがう光景は作家に影響をあたえました。
廃校に雪を連想させる空間をつくりました。真黒に塗りつぶされた肖像画が廊下に並び、教室では心臓の鼓動のように光と音が点滅し、白いガラスケースの「思い出の箱」が並んでいます。
今回は相棒のジャン・カルマンによる照明による演出効果が印象的な作品でした。
クリスチャン・ボルタンスキーの作品はホロコーストを連想させると評されることがあります。しかし作家はそのことについて明言していません。
白い色にこだわった作品は死の気配と影を漂わせています。しかし決して暗いものではなくノスタルジックな作品でした。彼の作品を前に人は喪失や死にまつわる埋もれた記憶の覚醒を実感するでしょう。
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